虫とFとⒶ

手塚治虫先生、藤子不二雄両先生について語るブログです。

『赤紙きたる』。終戦記念日。

今日8月15日は終戦記念日です。

そんな終戦記念日に読みたいと思った作品があります。

 

藤子不二雄Ⓐ先生の、赤紙きたる』です。 

 

この強烈な題名の作品は中央公論新社藤子不二雄Ⓐ ブラックユーモア短篇集③』のいちばん最後に収録されています。

 さぁ、お話……の前に……扉絵を見てみましょう。

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主人公は小池さん、小池伸一。

この左下に注目してください。

“ 参考資料:福島菊次郎遺作集『迫る危機』現代書館 ” 

この参考資料という表記はⒶ先生のブラックユーモア作品群には結構記載があります。

ではあらすじの前にこの『迫る危機』という本と福島菊次郎さんについて触れておきますね。

・ 『迫る危機』

『迫る危機ーー自衛隊と兵器産業を告発する!』

 

急速に武装の近代化を強行した陸海空自衛隊の全容の写真集。カメラマン自らが「遺作集」と名づけたように、正に生命を賭した写真の数々は、自衛隊の知られざる内奥に迫る。また三菱重工等の復活した軍需産業の実体にもメスを入れている。        (株式会社現代書館HPより引用)

これはどうやら写真集ですね。日本の現状を伝えて警告しているようです。この写真集の写真を撮るには壮絶な過去があったようで…………

 ・福島菊次郎さん

日本の写真家、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。

山口県下松市に、網元の四男として生まれる。1944年春に出征し、広島西部第10部隊に配属され、弾薬や物資を馬で運搬する任務に就くが、訓練中に馬に蹴られて骨折し、除隊となる(同部隊は福島の入院中に船で沖縄へ向かったが、魚雷に撃沈された)。1945年春に再召集。部隊が本土決戦の際に爆雷を背負って戦車に飛び込むよう命を受け、7月31日から日南海岸の砂浜に掘った穴の中に身を潜め、8月15日の終戦を迎えた。同月末に復員し、時計店を開いて時計修理や写真現像の仕事を始める。同年暮れに結婚。

戦後、民生委員などの社会事業を通じて作家活動をはじめ、広島市に投下された原爆の被災者の10年におよぶ困窮生活を活写した作品『ピカドン ある原爆被災者の記録』が、日本写真評論家協会賞特別賞を受賞(1960年)。しかし「ピカドン」の撮影で、被写体となった被爆者の凄惨な生活状況を間近に見続けたことで幻聴や幻覚に襲われ、精神衰弱の診断を受けて精神科に3か月入院し、時計店の経営も傾いたことなどもあって離婚。1961年、3人の子どもを連れ上京しプロ写真家となる。土門拳木村伊兵衛が審査員を務める「カメラ(CAMERA)」の月例コンテストに応募していたこともある。

原爆、政治・軍事問題、学生運動、公害・福祉問題などをライフワークとし、「ピカドン」など17回の個展を開き12冊の写真集がある。中近東、アラブ、ソビエト連邦などに長期にわたる取材もこなした。作品は、『中央公論』、『文藝春秋』、『朝日ジャーナル』などの総合雑誌グラビアで約3300点が発表されている。また、「写真で見る戦争責任展」などの写真展を全国510会場で開催した。

1969年、1年以上かけての「迫る危機」の撮影では、防衛庁(当時)を信用させ、兵器工場内の取材を許されたが、撮影禁止箇所を隠し撮りして無断で公表した。その後、暴漢に刃物で切り付けられ、鼻骨を折って10針縫う重傷を負い、その1か月後には自宅を放火された。ただし、家に保管されていたネガは娘が持ち出して無事であった。

1982年、自給自足の生活を目指し瀬戸内海の無人島に入植。1987年、検診で胃癌が見つかり、山口県柳井市の病院に入院。死を覚悟して『戦争がはじまる』と『瀬戸内離島物語』を刊行。1988年、手術を受け、入院中に昭和天皇の容体悪化報道が流れる。1989年、昭和天皇が亡くなった後、「戦争責任展」と銘打ち全国各地に写真パネルを展示する。展覧会場では爆竹を鳴らされたり、パネルに消火液をかけられたり、写真をナイフで切られたり、会場に銃弾を撃ち込まれるなどの右翼の妨害があり、中止に追い込まれた所もあった。

1999年、柳井市のアパートに在住。2001年以降は急性膵炎、大腸ポリープ、前立腺癌、胆嚢結石など高齢に伴う病気を患った。2011年に発生した福島第一原子力発電所事故を機に、再び活発に活動を続けていた。

信条は「余命はあと1年 生きたらあともう1年」。「この国を攻撃しながら、保護を受けることはできない」として年金は受け取っていなかった。

2015年9月24日、脳梗塞のため死去。94歳没。

なんだかすごい壮絶な人生を送られた方なんだなぁ。。。でも撮影禁止箇所とされているいかにも国家秘密みたいなとこを国民に対して公表したなんてすごすぎる……勇気がすごい。。。。まるで映画か小説みたいな話ですね。

また写真展が中止に追い込まれるなんてどっかの展覧会が中止になったアノ話みたいですね。

さて、そんな方の写真集を参考にした作品が『赤紙きたる』です。

 

主人公の小池伸一はある日の夜、一通の封筒を受け取ります。その中には召集令状、つまり赤紙が届いていたのです!!!!!!!驚いた小池伸一はそこにいた同期の友人に話しますが「それはイタズラだ」と言われ小池も落ち着きます。

 

しかし翌朝、小池は窓を開けると電柱に寄っ掛かって小池の部屋を見ている、見知らぬ男を目撃します。通勤中の電車内でもその男を見つけた小池は尾行されていると思い徐々に恐れていきます。歩いて通勤している中、こんな声も聞こえてきます。

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小池を恐怖に招く一つの要素です。

会社に着いた小池は社員(同僚)たちに赤紙を届けたのは誰か聞きます。しかし全員知らない。そんな中会社の電話から小池へ「あの召集令状はイタズラではなく本当だ。もし指定されてた日に所へいかなければ強制召集する」と電話があります。小池は周りの同僚や専務に喚きますが相手にされません。

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ちなみに小池が働いているのはアニメスタジオ。小池のモデル鈴木伸一さんを思わせます。

その日の帰りの電車にも例の男が乗っており、小池はさらに恐怖に包まれます。

 

やがて召集日の日曜日の朝。小池は布団にくるまり召集時刻を過ぎたらやっぱり何もなかったと思い、映画館に行く小池。しかし隣に座っていた女性の被害妄想で警察に連行される小池。

 

しかしそのパトカーにはあの男がいた………

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近いうちにありえるかもしれないと思わせるリアルな描写。こんなことが起こらないようにしなければ…………

 

 

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